現在、汎用的に使用されている繊維の多くは石油等の枯渇資源(ナイロン、ポリエステルなど)や動物(ウール、カシミヤなど)に由来しています。しかし、石油由来の繊維は、環境中へのマイクロプラスチックの放出が問題視されています。また、動物由来の繊維は、カシミヤヤギなどの過放牧による砂漠化や、家畜が地球温暖化の原因となる温室効果ガスの発生源になることなどの環境破壊の進行への懸念があります。そのため、従来の枯渇資源や動物に依存しない素材の開発・実用化が求められています。
そのような中、人工構造タンパク質は、植物由来の糖を主原料に微生物発酵で生産することから、最終的に分解されて自然界に還る能力に優れているため、環境への負荷が低い素材として関心を集めています。また、タンパク質は、20種類のアミノ酸の組み合わせでできており、用途に応じてその配列をデザインすることで、特性の違う様々な素材への応用もできることから、循環社会の実現に貢献する次世代の革新的バイオ素材として注目されています。
この人工構造タンパク質を用いた繊維について、日本企業は、遺伝子配列の組み立てから、発酵、精製、紡糸、加工に至るまで高度な技術水準を有しており、世界の技術開発をリードしてきました。
一方で、従来の国際規格や、各国・地域における分類・定義や試験方法などにおいて、タンパク質繊維(Protein fibres)は天然由来のタンパク質のみに限定され、人工構造タンパク質については、明記されていませんでした。さらに、海外の市場では、タンパク質がごく少量で大部分が石油由来の材料で構成される繊維であっても、タンパク質繊維として販売されている例がみられ、従来の国際規格によるタンパク質繊維の定義では、そのような繊維がタンパク質繊維として認定される可能性が残されていたため、取引上の誤認や消費者の混乱を招く恐れがありました。
そこで、内閣府主導の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)*1にて構造タンパク質の技術開発を行った産業・学術機関が中心となり、タンパク質繊維に関する用語規格において、人工的に製造されたタンパク質を含め、かつ繊維中のタンパク質成分の含有量を多いものをタンパク質繊維とするよう、日本から国際規格改正の提案をおこなっていました。
(引用:経済産業省「
タンパク質繊維の名称・定義に関する国際標準発行」)

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