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人的資本情報開示とISO30414

昨今、人的資本の情報開示が各企業に求められています。人材(ヒト)をモノ・カネのように資本として解釈する考え方が「人的資本」です。本記事では人的資本開示のガイドラインISO30414について、その基本概念、領域、背景、具体的な取り組み、メリットなどについてお伝え致します。米国で、ISO30414をベースに人的資本情報開示を義務化する動きに出たことで、日本においても適応が始まるのではないかと注目が集まっています。

ISO30414とは?

ISO30414は、2018年に国際標準化機構(ISO)により発行された人的資本情報開示のガイドラインです。企業が人的資本に対してどのように取り組んでいるのかを明らかにするのが人的資本開示です。これまで、具体的にどのように示すべきなのか、国際的かつ標準的なフォーマットが統一されていなかったため策定されたガイドラインがISO30414です。そもそも「ISO」とは、スイスのジュネーブに本部を置く、International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略です。ISO活動は、国際的な標準規格制定の目的は、国際間の取引を標準化しスムーズにすることにあるといえます。

ISO30414に記載されている具体的な項目

ISO 30414は人材マネジメントの企業報告について網羅的に定義されています。
具体的な項目は以下の図の通りです。

企業価値の変化

ソフトウエア産業をはじめとしたサービス産業が主流となっている現在、企業価値の多くは無形資産で形成されています。つまり、かつて有形資産で企業価値をなしていた時代からは大きく変化し、現在は、有形資産を表している財務諸表を投資家が見たところで、現実的な企業の価値、成長性を判断することはできません。そのため、リーマンショック以降、投資家から企業の無形資産、すなわち人材情報に対する開示要求が強まりました。それに応える形でISO30414は発行されることとなりました。

ESG投資の注目

国際社会では、企業が成長するためには、ESGの観点が必要不可欠であるという考え方へと変化しています。国内でもESGについての理解度も広まり、徐々にESGを重視する企業が増えています。ESGの観点から投資先を選定するESG投資も注目を集めており、ESGは投資家にとっても重要な指標の1つとなりました。気候変動問題や従業員育成、労働環境改善にどれだけ企業が注力しているのかが企業の持続可能性を高めることにも大きく影響しており、社会的に注目されているのです。

ISO30414の取り組み実情
●欧米諸国での取り組み

ISO30414への取り組みは、欧米と日本では大きく差が開いています。2019年11月、米国SEC(証券取引委員会)が人的資本情報開示を義務化する動きに出ました。米国では、従来から人的資本に関しては従業員数のみ開示義務がありましたが、この義務化の動きによって、上場企業はその他の人的資本情報も開示しなければならなくなりました。ただし、この義務化の動きでは、開示する項目と分量が明確には定められていません。
欧州では、2017年度(会計年度)から従業員500人以上の上場企業に対し、人的資本情報の開示が義務化されています。いずれ全ての上場企業が対象になる見込みです。

●日本での取り組み

日本では現状、欧米の動きを見ながらソフトロー(罰則無し)のままいくか、ハードロー(罰則あり)でいくかを検討している状況です。海外では、ハードローにしないと動かない企業が多いですが、日本では、コーポレートガバナンスコードに示されただけでも、人的資本情報の整備をしないといけないと考える企業が多い傾向にあります。今後、米国で法案が成立した場合、日本においても対応が求められる可能性が高いです。そのため、早い段階で準備を進めておくことが必要です。金融庁が2023年度にも、有価証券報告書に記載することを義務付ける項目もあるため、引き続き情報をご確認ください。

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